東京都の個人邸です。
リビングに海の見える窓のだまし絵を入れたいという最初のお問い合わせからやりとりを重ね、実現の運びとなりました。
明るいリビングルームの一方向の壁面に、窓枠のだまし絵とそこから見える景色を描きます。
絵自体の大きさは幅約2.5m・高さ約1.5mほどです。
現場での制作日数:7日間(構想段階の期間は1ヶ月)
経緯
最初の「海の見えるだまし絵」という漠然としたイメージから、やがて「小高い場所から見下ろした構図で、森の向こうに海が見える感じ」とだんだん具体化していきます。
施主様は夫婦揃ってのサーファーで、そのため海・波・椰子などに関しては魂に焼き付いているほどの見慣れたオブジェクトのはずなのでして、それらをいい加減なふわふわしたイメージだけで描くのはお客様にも失礼だし絵の仕事への冒涜にもなります。
サーフィンはおろかカナヅチで出不精でハワイに行ったことがない私にとっては難易度の高い挑戦となりました。
事前に打ち合わせを兼ねてお会いすることができ、お話を伺ってそれから資料の本をお借りしました。本来なら「ではハワイに取材に行ってきます」となるのが筋ですがそういうわけにもまいりません。資料からイメージを膨らます以外にありません。
壁面
壁面は珪藻土による仕上げです。
施主様から、壁面の仕上げは EM珪藻土 のフラット仕上げに決まったとの連絡を受けました。
それ以前には内装工事について不明なことが多かったので、いろんな可能性を考えて下地の提案などもおこなっていたのですが、リフォームであることや壁材のことが明確になりました。
EM珪藻土は、質の高い住宅リフォームで実績のある株式会社 OKUTAの建材部門の商品です。施主様宅の工事全般も株式会社OKUTAが請け負うことに決まったとのことで、壁画制作と内装工事は切っても切れない関係がありますし、珪藻土と一口に言ってもメーカーによって配合が異なります。そこでさっそく勝手に問い合わせることにしました。
珪藻土の上に絵を描くので詳細を知りたい旨を伝えると、メーカーの担当の方が乗り気になってくれてサンプルボードをいくつも提供してくださいました。
これは随分助かりました。実際にいろんな濃度で下地材や絵の具を塗って試すことができます。材料との相性や水分吸収の加減、質感などをすべて事前に確認することが出来ました。
サンプルの提供を受けた上に、細井工房名指しのトピックまで作っていただき、かなり恐縮です。何でも協力します。
このページです。是非ご覧ください
→EM珪藻土フラットの施工面に、細井工房様が壁画を描きました!|珪藻土トピックス
EM珪藻土さんにおかれましては、珪藻土の付加価値を高める提案の一つとして、どんどんご利用になっていただければと思います。そんでもってあわよくばワタシニデンワシテクダサーイと(ネタが古すぎますか…)
原画
今回は、最終的な意味での原画というものを作成していません。原画は簡易なスケッチ程度の下書きをいくつか提案していく中で決まっていきました。
最終的な仕上がりに近い形の原画というものが必須となる場合も多くあります。今回は仕上がりのサイズが壁画として比較的小さいため、完成品と同等の原画を作成するとなると、壁画の制作と同じ規模の期間やコストがかかってしまう恐れもありました。
依頼主様にとってはとんだ冒険であったと思います。ですが逆に「完成はどんなふうになるんだろう」という不安も含めたわくわくした気持ちも絵のうち、と、半ば強引にラフスケッチのまま進めました。
かっちりした図面のような絵ではなく風景などの場合、詳細な原画はすべてのコストを引き上げます。詳細原画を作成するには本番の制作と同じ精細さが必要になりますし、その精細な原画を壁面に再現するためにまた途方もない手間がかかってしまうからです。
制作
制作は現地の現場で行いました。制作期間について、当初は6日間の制作を目指していましたが、実際には7日間プラスアルファの日数が必要でした。
制作中は内装工事も終わっており、他の職人さんは誰ひとりおらず、施主様もあまり見に来られない状況だったこともあり、制作に没頭することができました。
現場制作の場合、アトリエでの制作と比較して効率が半分以下に落ちるのが常です。今回はアトリエで作業しているかのごとく集中できたことが幸運でした。
完成写真:全体と詳細
絵を描く工程
絵を描く工程を更新しました。是非ご覧ください。