天井画の制作、その工程と手順をご報告、古い記事です。
短期間の制作でびしっと決めるということ
さていただいたデザインを元に、どのような完成を目指すか考え、それを踏まえて下絵や下書きを作ります。
この、下絵や下書きができるまでが実は肝心で、ここを飛ばせば何の事やら判りませんし若い人の勉強にもなりません。そして世にあるHow to本と同じく、肝心なところをすっ飛ばして説明を始めたりするわけですこのコラムでは。
で、そのように下描き乃至下絵を描いた後、闇雲に天井全面に黄土色の彩色を施す。この彩色が、ただのムラのようでそうでなく、経験がものを言う部分である。一見でたらめだが本当にでたらめである。いや、そうじゃなく、このでたらめの中にすでに数々の経験が含まれているので、ここは思い切って、おれがやること全てが芸術的意味が含まれるのじゃ、と、かつての山下洋輔のようなことを言ってみる。
気を落ち着けて空の部分から色を置き始めるとあら不思議、ただのでたらめ塗りだと思っていた黄土色が蟹としてにわかに命を持ち始める。何となく陰影があり、何となく形が現れる。
蟹に更なる陰影を付け、空には深みを与える。深みを与えるというのは、先生的に言うと深い色を塗り重ねるということ。よろしいか?
さて、深みの隙間、雲の余りの部分と思わせていた空間に は双子座などがぼんやり現れる。もちろんはじめから計画済み。で、これに関してはあまりしつこく描きすぎないのがポイント。
最後は黒い色でビシッと絞める。あっ。また途中の説明を省いたな、と気づいたあなたは絵を描くということがある程度わかっている。
これにて完成です。最短の時間で最大の効果を発揮できました(自負)
初出:1997.11.25
細井工房
※ 追加した綺麗な写真は、21世紀になってからフィルムスキャナで取り込んだ写真です。この蟹座の天井画はポジで撮っていたため、色がほんと綺麗。
現場への道中に撮った空も良い色してます。
追記:2010.3.25