色を置き始めます。最初は空です。
骨書きが完了した後、細部をチェックしていよいよ色を置き始めます。
色を置き始める
背景となる空から色を差していきます。淡彩画のような進行を目指しているので薄く、壁に染み込ませながら塗り広げます。
オリジナル原画はインクの濃度で色を表現していますが、大きな壁画では同じ技法を取れません。インクは透明色、顔料は不透明色だからです。ですので、透明色の味わいを出すため、複数の色を重ねて調子を作ります。また、これはインク画ではなくフレスコ画を目指した壁画ですし、そもそも大きさがまるで違います。物理的な大きさというのは絵にとってとても重要です。そういう意味でも原画と同じ調子では進められません。
原画が持つインクの塗りムラという味わいをどうするかという点が悩みどころであり、細井工房が壁画で模写をするという意味合いが最も強く反映される部分です。
原画のインクによる塗りムラは、原則的に壁画では再現しません。しかしまったくそれを無視するというのは原画の魅力を半減させます。インクムラを写し取っても嘘くさくなりますし無視するのも耐えがたい、いろいろな意味で間を取るという判断が問われる部分です。随時判断しながら、原画の味わいを壁画の味わいに転化させるということを行います。これが我々の個性であり技術となっております。