額縁に見えるだまし絵を描いたときの工程日誌、古い記事です。
まずは下絵を描く
今回は派手 な金色の額縁です。騙し絵ではありますが、上品さを失わないよう心掛けるというのが勝手 に決めたコンセプトでした。さてどういう風に始めるか。
まずはごりごりと下絵を描いて行きます。
ほんとうはごりごりてなもんではなくここまでが長い道のりなわけですが。はっきり言って下絵を書き出すころには仕事の半分が終わったも同然です。
色を決めて塗る
最初の色はたいてい、次 の中から選びます。
1.明るい色 2.中間色 3.暗い色
当たり前ですがやはりどれかから選ばなければなりません。
悩んだ末、3の暗い色で始めることにしました。重みを出したかったからです。
それにしても、黒くするか、赤に振るか、緑に振るかで悩みます。
金色だから赤に振るという気持ちもありますが、それだと真鍮か偽物の金色になりそうな気がします。個人的には赤金よりも青金が好きなので、思い切って緑よりの暗い色を作りました。
この色を塗ると、腐った材木のような感じになりました。私の決断にスタッフも心配そうです。
ゆっくりと持ち上げて行く
焦らず、少しづつ明るい色を乗せて行きます。一回りするたびにグレーズをかけて調整。光の角度を決めて、影色に深みが出るよう、よく考えます。
右の影、左の影、照り返しの3種類くらいは押さえておきたいものです。それにしてもCGと違って、グラデーションを作るのが至難の業です。また、つい、癖で、「ここで、アンシャープマスクを80パーセント」とか「赤のチャンネルで中間色を左に5」などと不可能な欲求を訴えがちです。
説明不能の描画工程
このへんまでいくと、形も呆けがちですから、照り返しとハイライトでシャープさを演出し始めます。多少理屈がおかしくてもやるときはやります。それでいいのです。
ほんとのような色とほんとのように見える色は違います。
ちょっと派手目の方がいい場合があります。
近くで見るとこのような感じですが、何となく古色の金っぽくなったでしょうか。
初出:1997.03.25
細井工房